少し日が開いてしまいました。
本日は呼吸生理その4「低酸素をきたす病態について」
お送りしたいと思います。
今までの呼吸生理1から3である程度、呼吸とはなんぞやとは知っていただけたのでは?
今回は臨床でぜひ考えていただきたい内容をお届けします。
受け持ち患者の酸素化悪化(SpO2低下やPaO2の低下)時、ただただ
「あ、下がったなー。」「下がってるわ。」だけで済ましてはいませんか?
下がった背景はどういう状態になっているかを考えるだけで、また低酸素をきたす病態を知っているだけで対応は変わってきます。
低酸素をきたす病態は4つ
4つだけなので覚えておいてください(^^)
1.換気血流不均衡(ミスマッチ)
換気血流ミスマッチと呼ばれることもあり、私はこの言い方で育ちました。
換気とは空気の出し入れのことです。
血流は肺胞で酸素と二酸化炭素の受け渡しを行います。(=ガス交換)
肺循環と血圧と血流の関係から、正常な私たちでもミスマッチはおきています。
(ただ、健常人と比べて病変部がある人ではこのミスマッチが大きくなるため低酸素となります。)
肺の上部、中部、下部では血流と換気に差が生じます。
重力の関係で上部では換気は多いが、血流は少ない。反対に下部では換気は少ないが、血流は増える。
せっかくたくさんの空気が入ったとしても、血流が少なければガス交換ができず、また血流が多くても換気が少なければ不十分なガス交換しか行えない。といったことになります。
ガス交換に関わらない部分を死腔といい、解剖学的死腔(気管や気管支)、生理学的死腔(肺内の換気に対して血流がない部分)と呼びます。
なぜ低酸素をきたすかというと
肺炎で肺胞実質の炎症になったとしましょう。
肺炎のような炎症疾患は肺胞腔に浸出液が溜まってしまいます。そうなるとそこには空気が通りませんよね?
血流はあるけど、換気が行われていない。
すなわち、ガス交換されないまま体を巡ってしまいます。病変部でのガス交換が行われていないので、全体のPaO2は低下します。
これが換気血流不均衡とよばれる病態です。
・肺炎その他感染症
・間質性肺炎
・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
・肺水
・肺血栓塞栓症(PE)
あげればきりがありません。たくさんありますね。
2.シャント
シャントもわかりずらい言葉ですよね。日本語でいえば「短絡」と意味になります。
児心外でいうとASDやVSDなどの心房・心室欠損症を考えてもらえたらわかりやすいと思います。
右室から出た血液が肺にはいかず、左室にいき全身に静脈血が回ってしまうこと(右左シャント)をシャントと呼びます。
シャントはひろーい意味あい(広義)で換気血流ミスマッチに含まれます。
この話をすると「え!」って思われる方もいますが…
お持ちの参考書ではどう書かれていますか?僕の持っている参考書籍でも同じ意味合いであったり違うかったりとかなりややこしいです。
狭義のシャント
肺胞のない場所へ、血流が流れることで換気血流ミスマッチと同じ理屈で低酸素血症となる。本来の意味でつかわれているシャントは肺動静脈瘻や先天性心疾患を指す。
肺動静脈瘻:肺内での動脈と静脈が直結することでその部分のガス交換が行われない。血管奇形。
広義のシャント
病的状況によって有効なガス交換をしない肺胞が存在する場合、その部分もシャントと呼んだりしまう。
無気肺や肺水腫、肺炎なども含まれます。
狭義のシャントは構造など先天的なことから解剖学的シャント、広義のシャントは生理学的シャントと呼んでいるみたいです。
「やさしイイ 血ガス・呼吸管理 長尾太志」に書いてありました。
3.拡散障害
拡散とは?
肺胞から肺毛細血管(肺胞を取り巻く血管)に酸素が移動することを拡散と言います。
肺胞から血管までの間に間質があり、その差は0.2~0.3μmととても薄いです。
そのうすーーーーいところで酸素や二酸化炭素の移動がなされています。
血流は絶えず流れていて、肺毛細血管をわずか0.75秒で通過します。
その0.75秒の間に酸素と二酸化炭素の移動を完了させる必要があります。
酸素の拡散は0.3秒程度ですが、二酸化炭素は酸素の20倍ほど拡散能が高いみたいです。
もし、この拡散能に障害があったら?間質性肺炎のように間質の炎症で距離が遠くなっていまったら?
無事酸素は0.75秒の間に受け渡しができるでしょうか。
できない結果低酸素血症につながるということですね。
酸素の移動効率が悪くなることを拡散障害といいます。
また肺気腫などでガス交換面積が減少することも拡散障害に含まれます。
そして酸素を運ぶのはHbであり、貧血あることも低酸素血症をきたしますね。
・間質性肺炎
・広範囲な無気肺、肺切、COPD
・貧血
4.肺胞低換気
十分なガス交換が行えるだけの肺胞換気量を得られていない状態のことです。
となると低酸素血症もきたすと思いますが、高二酸化炭素血症にもなっている可能性があります。
・呼吸中枢抑制
・神経筋疾患
・肺、胸郭異常(慢性的な肺疾患、肥満、後側弯症)
以上4つが低酸素をきたす病態でした。
ここからまた1歩進んでA-aDO2の説明をしたいと思いますが、また次の記事にしようと思います。
あとは換気障害(閉塞性・拘束性)についても書かないとなとは思っています。
見ていただきありがとうございました。
間違った点がありましたら教えてください。